2022-01-01から1年間の記事一覧
昨今の出版界においては「映画の本は売れない」と囁かれているらしいが、それにしちゃヴィジュアル豊富な豪華本や映画人の自伝に評伝、マニアックな研究書が次から次へと書店に並ぶのはどうしてなんでしょうね。志高き出版人や編集者がまだまだ健在というこ…
年またぎの年末進行に追われる中、どうにかPARCO劇場の『幽霊はここにいる』を観ることができた。 安部公房の戯曲としては『友達』(1967)と並ぶ代表作であり、岸田演劇賞受賞作でもある『幽霊はここにいる』(1958)は、戦友の「幽霊」を連れ歩く男・深川…
2022年も残りひと月となりました。 秋に入って以来、あちこちから立て続けに訃報が届いているわけですが、個人的に大きかったのは、10月7日、私が所属する制作会社の創業社長にして現会長である倉内均監督が亡くなったことです。なにしろ会社に第一報が届い…
仕事がずいぶん忙しくなってきたので、新作映画もチェックできない日々が続いているが、今月はどうにか演劇を二本観ることができた。 ひとつは、シベリア少女鉄道の新作『アイ・アム・ア・ストーリー』(作・演出 土屋亮一)。 公演が終わっているのでネタバ…
小林正樹(1916〜1996) 前回のブログで「あなたはそのままでいい」という、『ブッタとシッタカブッタ』(小泉吉弘)あたりが発祥かと思われる主人公肯定型の映画やドラマが増えてるよねー、という話を書いたところだけど、ちょっと関連しなくもない評論を読ん…
WANDA/ワンダ(1970) いやー、『ちむどんどん』が最終回を迎えましたね。 羽原大介はどうかしてしまったのではないかと心配になる話の粗さではあったけど、テーマとしてはローカリズム称揚であり、方言も性格も容姿すら変わらないヒロイン・暢子とその家族…
Jean-Luc Godard(1930〜2022) 始まりはレンタルビデオで観た黒沢清監督の『ドレミファ娘の血は騒ぐ』だった。すでに『外国映画ベスト150』などの本で「ジャン=リュック・ゴダール」という人名は知っていたものの、「ゴダール的なるもの」との出会いは黒沢…
化石ハンター展のチベットケサイ 8月は仕事のスタジオ収録で忙しかったのに加え、知人の新型コロナウイルス陽性が判明し「濃厚接触者」になったがために5日間の自宅待機を強いられたり、お盆期間以降、ずっと編集室にこもりきりだったりして、ほとんど外に…
先週の訃報ラッシュはすさまじいものがあり、ついには安倍元首相の暗殺という大ニュースまで飛び込んできた。が、その中でも個人的に思い入れが深いのは、特技監督の中野昭慶さんの訃報である。 じつは私が今の仕事を始めて最初に取材した人物こそ、中野監督…
『ノッホホン氏』や『すってんころりん劇場』で知られるナンセンス漫画の大家・秋竜山は伊豆の半農半漁の家の長男として生まれた。過酷な労働に追われていた少年時代のある日、彼は観光客が読み捨てていった一冊の文庫本を拾った。フランツ・カフカ『変身』…
この20年、本公演をかかさず観賞しているシベリア少女鉄道の新作『どうやらこれ、恋が始まっている』(作・演出 土屋亮一)を観てきた。 数年前、このブログでシベリア少女鉄道の「ネタ」のパターンを細かく分析したことがある。 1・シリアスなドラマが後半…
『サスペンス小説の書き方〜パトリシア・ハイスミスの創作講座』を読んだ。原著は1966年に初刊行、1981年には増補改訂版が刊行され、今も読み継がれているという。 序文の一行目に書かれている通り、この本は小説執筆についてのハウ・トゥー本ではない。作家…
4月にスタートするレギュラー仕事の準備に入ったため、年始から忙殺されておりました。この間にも世間ではさまざまな出来事があったが、何はともあれ、ロシアによるウクライナ侵攻である。 21世紀の先進国首脳の中では、キャラの濃さと危険度において段違い…
今年の映画見物は、2本の映画人を扱ったドキュメンタリーからスタートです。ビョルン・アンドレセンの人生と現在を描く『世界で一番美しい少年』(監督クリスティーナ・リンドストム&クリスティアン・ペトリ)と、夭折したジョン・ベルーシの生涯を描く『BE…