星虹堂通信

旧ブロマガ「スローリィ・スローステップの怠惰な冒険」の移転先です

文学

安部公房生誕百年〜『飛ぶ男』の文庫化と「作家の誠実さ」について

2024年3月7日は安部公房100回目の誕生日。 新潮社を先頭に、生誕100年フェアがあちこちで進行中だ。『新潮』でも『芸術新潮』でも安部公房特集が組まれているし、長いこと待たされた安部作品の電子書籍化もついに実現。さらに1994年に刊行されたきりだった未…

佐藤哲也『イラハイ』読書会に参加して思い出したこと

先日、知り合いがオンラインでやっている読書会で、8月に亡くなった佐藤哲也のデビュー作『イラハイ』(1993)を課題本にするというので、参加してみました。 普段は思想書をメインとする読書会なので、常連のみなさんがサトテツ作品をどう受け止めるのか、…

“意地悪ばあさん”の素顔〜『パトリシア・ハイスミスに恋して』

エヴァ・ヴィティヤ監督『パトリシア・ハイスミスに恋して』を観た。 25年以上も前に亡くなった作家の評伝が、ドキュメンタリーとして成立するのかと思いきや、意外に映像資料が豊富に残されていたことに驚いた。そして未発表(近年、書籍化された)の日記の…

深緑野分『スタッフロール』を読み、ジョン・ランディス『狼男アメリカン』を観る

年末からかかりきりだった仕事が一段落し、昨年の半ばから積んであった深緑野分の新作『スタッフロール』をようやく読めた。 前半は1960年代から80年代を舞台に、ハリウッドの特殊造形スタッフとして活躍した女性が主人公。後半は2017年のロンドンを舞台に、…

クールだが無機質ではない安部公房コメディ〜パルコ・プロデュース2022『幽霊はここにいる』

年またぎの年末進行に追われる中、どうにかPARCO劇場の『幽霊はここにいる』を観ることができた。 安部公房の戯曲としては『友達』(1967)と並ぶ代表作であり、岸田演劇賞受賞作でもある『幽霊はここにいる』(1958)は、戦友の「幽霊」を連れ歩く男・深川…

「日本」という壁〜ヤマザキマリ『壁とともに生きる わたしと「安部公房」』

『ノッホホン氏』や『すってんころりん劇場』で知られるナンセンス漫画の大家・秋竜山は伊豆の半農半漁の家の長男として生まれた。過酷な労働に追われていた少年時代のある日、彼は観光客が読み捨てていった一冊の文庫本を拾った。フランツ・カフカ『変身』…

パトリシア・ハイスミスの「創作指南書」と森卓也の「悪口」

『サスペンス小説の書き方〜パトリシア・ハイスミスの創作講座』を読んだ。原著は1966年に初刊行、1981年には増補改訂版が刊行され、今も読み継がれているという。 序文の一行目に書かれている通り、この本は小説執筆についてのハウ・トゥー本ではない。作家…

デジタル世代の安部公房?〜シス・カンパニー公演『友達』

シス・カンパニー公演『友達』(上演台本・演出 加藤拓也)を観た。 安部公房の戯曲としてはいちばんの知名度を誇るこの作品、やたらあちこちで上演されている印象があるが、有名俳優を揃えたメジャー公演として取り上げられるのは、2008年の世田谷パブリッ…

安部公房文学の“演劇的”解釈〜ケムリ研究室公演『砂の女』

何年も前からケラリーノ・サンドロヴィッチが上演の意思を表明していた『砂の女』の舞台化が、緒川たまきとの夫婦ユニット「ケムリ研究室」でついに実現した。 大いなる期待と若干の不安を抱きつつ観劇してきたので、その報告を。 安部公房の代表作『砂の女…

没後20年・勅使河原宏の特集上映に通う

今年は勅使河原宏(1927〜2001)の没後20周年。ということで、シネマヴェーラ渋谷では、その映像作品の特集上映「アートを越境する〜勅使河原宏という天才」が開催されている。 映画監督としての勅使河原宏は、これまでまとまった評価がされてきたとは言い難…

「落語」を通して世界を見よう〜頭木弘樹『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』

前回の更新から早くも2ヶ月半が経過してしまった。 休業期間が明けてからというも

“7日間ブックカバーチャレンジ”で紹介した本

前回のブログから、はやくも2ヶ月あまりが経過しました。 みなさんいかがお過ごし

告白的錯乱論〜吉田喜重『贖罪 ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争』

吉田喜重『贖罪 ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争』(文藝春秋)https://b

曖昧で猥褻な日本と私〜『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

いやはや……。 じつは先週末から「休業」を仰せつかり、自宅で過ごしています。「

大河ドラマ『いだてん』に「天狗倶楽部」登場!〜横田順彌と古典SF三部作

東京オリンピックについては蟻のお猪口ほどの関心も持ってない私だが、大河ドラマ『

喜志哲雄が語るハロルド・ピンターの世界~『誰もいない国』と『ピンター 、人と仕事』@新国立劇場

公式サイト https://www.nntt.jac.go.jp/play/no

追悼・安部ねり〜安部公房『(霊媒の話より)題未定』出版記念トークライブ報告(2013年2月20日)

安部ねり『安部公房伝』(新潮社) 安部公房の長女にして『安部公房伝』(新潮社)の

一人称のミステリ、三人称のミステリ〜原尞『それまでの明日』と奥泉光『雪の階』

先日、原尞の新作『それまでの明日』と奥泉光の新作『雪の階』を読んだ。どちらも殿

透明人間の告白〜書評・山口果林『安部公房とわたし』

2013年に出版された山口果林の『安部公房とわたし』が、3月21日に改めて文庫

永遠のモダン・ガアル還る〜植野祐美一人芝居『ベティ・ブープ伝』

千歳船橋のAPOCシアターで開催されている、「アポック一人芝居フェスティバル」

何も起こりはしなかった?〜ハロルド・ピンターの『管理人』と『誰もいない国』

公式サイト https://setagaya-pt.jp/performance

1973年に安部公房が描いた「ハムレット」〜笛井事務所『愛の眼鏡は色ガラス』

公式サイト https://www.theater-officefey.com/

白の絶筆〜『鮎川哲也探偵小説選』で『白の恐怖』と『白樺荘事件』を一気読み!

『鮎川哲也探偵小説選』(論創社) かつては旺盛に執筆していた作家が、晩年パッタリ

脚本家・水木洋子邸に行ってきた

2003年に亡くなった脚本家・水木洋子の旧宅が、千葉県市川市に寄贈され、今では

スローリィのぴんぼけ日記〜最近観たもの読んだもの(2017年4月)

前回の更新から早いもので2ヶ月あまりが経過、このブロマガも開設3周年を迎えまし

『映画監督 小林正樹』を読む〜幻の『敦煌』について

公式サイト https://www.iwanami.co.jp/book/b26

安部公房のオブジェを再現してみた〜そして、去年出た2冊の研究書について

NHK「訪問インタヴュー 安部公房」(1985) 昨年の秋、日本映画専門チャンネ

『村上春樹と私』〜ジェイ・ルービン講演会@6次元

『村上春樹と私』ジェイ・ルービン(東洋経済新報社) 夏目漱石、村上春樹をはじめと

なにかを深く好きになることが必要だ〜『森卓也のコラム・クロニクル 1979-2009』

公式サイト https://takuyamori2016.tumblr.com

ストリップする幽霊〜俳優座公演『城塞』

(公式サイト) http://u0u0.net/qsbG昨年の『巨人伝説』レヴュ